土地に関する事例

共有を解消して土地の有効利用を実現。

【事例】

顔も見たことのない共有者が出てくることも・・・

某市にお住まいのAさん。古くからの土地オーナー様で、幹線道路沿いの一等地に広い土地をお持ちです。ところが、何度かの相続を経て3箇所の土地が下図のように兄弟・親戚の共有名義になるに至りました。

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土地の共有については、①保存等の管理行為は単独でも出来ますが、②賃貸借、売買等の処分行為は全員の合意が必要となります。これでは例えば賃貸する場合でも意志統一に時間がかかり、一人でも反対すればいくらいい条件のテナントがいても無理になる、等の不都合があります。これでは土地の有効活用など出来る筈もなく、一等地であるにもかかわらず月極駐車場で運用するのがやっとの状態でした。

さらに、もし今後誰かに相続が発生すれば、共有者がさらに増えて、事はもっと複雑に なります。今はまだ全員が全員を知っていますが、顔も見たことのない共有者が出てくる ことも十分にあり得るのです。こうした事態を解消すべく、不動産会社を通じて当事務所 に相談がありました。

この種の仕事は何度も経験していますが、この事案は特に複雑でした。今なら整備され た不動産の証券化、民事信託の活用等も選択肢として考えられますが、当時は持分の交換 という手法を採用しました。
こうした案件については、当然のことながら3つの条件があります。

①各自で平等となるように持分を交換し、可能な限り共有を解消すること。

②各持分同士で等価となるように交換し、差額精算は可能な限り避けること。

③分割後の各土地が有効に出来るように考慮すること。

まるで複雑な連立方程式を解くような難解な仕事でしたが、公認会計士、司法書士、土地 家屋調査士等の専門家と協働で皆さんの合意が得られる案を作りました。

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こうして可能な限り共有関係を解消したそれぞれの土地については、不動産会社がそれぞれにテナント様を仲介し、分割前では想像も出来なかった高い収益をあげられています。

【解説 1 】

相続はどんな健康な人でも必ず発生するものです。ただ、このときに安易な分割、共有で対応すると、いざ有効活用するとき等に支障が生じやすくなります。
事例は共有者全員が共有を続けることに対して強い危機感を持ち、分割に比較的協力的だったこともあってうまくいった事例です。ですが、相続の協議等でふとしたことから感情的なしこりが残り、必要は認めつつも共有を解消できない事例もたくさん見てきました。
・・・資産を持っている故の贅沢な悩みですね。

【解説 2 】

各法令が整備された今でしたら、例えばこういうやり方もあると思われます。

『民事信託を使ったスキーム』

① A・B・C・D・Eさん(以下、Aさん等といいます)が出資して新会社を設立し、各人が委託者兼受益者、新会社を受託者とする信託を設定する。

② 新会社は、信託された財産(土地)を賃貸等で運用し、収益を信託利益としてAさん等に給付する。

③ Aさん等は以後、複雑な土地の共有関係は解消、主に信託受益権を管理すればよい。

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